この記事では、今の僕の感覚で良いと思えるデスメタルの単音リフの作り方を、僕なりにお伝えしようかと思います。
ただし、僕は音楽経験が豊富というわけでないので、「少し知識をつけたトーシローが蘊蓄を語っとるな」くらいに思って頂けるとありがたく思います。
それでは本題です。
デスメタルには大きく分けて2つのタイプがあると僕は思っています。
その2つというのは「調性の感じられるもの」と「そうでないもの」です。
調性というのは音楽用語ですが、説明するのが難しいので詳しいことは自身で調べてください。
ただ、調性のある音楽というのを簡単に説明すると、「スケールやハーモニーの統制がとれており、音楽理論に当てはまった状態にある音楽」という風に考えてもらって問題ないと思います。
それで今回紹介するのは調性のあるデスメタルの単音リフ作曲法です。
調性のないデスメタルを作りたいのなら、12音の中から好きなように音を並べる(或いは調性感のないディミニッシュやホールトーンなどのスケールを使う)とそうなるので、あまり言うことがありません。
ちなみに、今回紹介するのは基礎的な音楽理論の話なので、音楽理論を体得している方なら特に収穫のない記事になるかもしれません。
では早速、リフの作り方の大まかな手順を紹介します。
1 コード進行を考える。
2 考えたコード進行に沿ってメロディをつける。
3 デスメタルらしく刻みのアレンジを加える。
作曲に於いて当たり前のことを書いただけに見えますが、この3つの手順でリフを作れば失敗しにくいと僕は思っています。
小さい頃からピアノなどを弾いてクラシックの感覚が身についている場合ならまだしも、そうでない場合にはフィーリング100%でリフを作ることを僕はおすすめしません。
所謂、捨てリフになる可能性が非常に高いからです。
ではまず1の「コード進行を考える」から説明します。
皆さん、コード進行がどういったものかご存知でしょうか?
コード進行というのはハーモニーの流れという意味なのですが、音楽には適切なハーモニーの流れというものがあります。
さて、ここである疑問を抱く方もいらっしゃるかと思います。
「ハーモニーなんてほとんどないデスメタルでコード進行だと!?」と。
確かにデスメタルに於いてハーモニーが存在する場面は少ないのですが、僕の持論ではコード進行を想定したリフに良いリフが多いのです。そして、コード進行の概念のないメロディよりメロディアスに聴こえるため、演奏効果も高くなります。
なので、コード進行を考えるということに非常に意味があるのです。
更には、適切なコード進行を理解していないと、ダメなメロディを作ってしまう可能性がグンと上がります。
というのも何故か人というのは間違ったコード進行の音楽を聴くと不快に思ったり、感動出来なかったりするからです。
例えば、音楽を聴いていて「んー、ここのメロディがなんか気持ちよくないなぁ」とか「一瞬良いところがあったのに、なんか残念な方向にメロディが行ったなぁ」という時はコード進行に問題がある可能性があります。
なので、まずはコード進行に対する理解を深めるのが得策なのですが、コード進行を理解するというのは「音楽理論を学ぶ」というのとほぼ同義なので、ここでは根本的な説明はしません。
ちなみに「理論を学ぶとオリジナリティがなくなる!」と言う方をちらほらネットで見ますが、僕は無知が故のオリジナリティにあまり肯定的ではありません。大抵の場合、無知が故のオリジナリティを体現した音楽というのは、ただの欠陥品に聴こえます。
僕の持論では、余程の天才でもない限り、無知を評価されることは少ないかと思います。
それで評価されている人というのは天才で間違いないでしょうし、そういった人のやり方というのは凡人向きでない可能性があります。
それに普通に考えて、知識はないよりある方が良いと思うんですが、どうでしょうか。
今まで生きてきて「あの知識がなかった方が人生が豊かだった」と思うことなんて稀ですよね。そういうことです。
それに音楽理論なんてものは取っ付きづらいだけで、大して難しいものではありませんし、知って後悔するような怖い情報も含まれていません。全て役に立つ便利道具のようなものです。
話が脱線しましたが、じゃあ、どうやってコード進行を考えるねん!って話なんですが、ズバリ考えません!
考えずに、ネットから定番のコード進行をとってきましょう。
これまた意外な話かもしれませんが、音楽には定番のコード進行というものがあります。
メタルも例に漏れず定番の進行がたくさん使われています(そしてそれらの曲が人気の場合が多い)。
で、その定番のコード進行を使えばおおよそ良い曲になります。もちろん100%ではありませんが。
一応、ここにメタルで使えそうな循環できるコード進行をいくつか書いておきます。
全てキーAmで表記します(Amを使えということではありません。あくまで例です。例に挙げている曲のキーが、必ずしもAmと言うわけでもありません)。
mがつくものはマイナーコード、何もつかなければメジャーコード。
[]の中には番号を記しています(コード進行のことを記す際、ほとんどの場合数字で表記します。これはどのキーであるかに関わらず相対的な音の関係を表せるからです。マイナーキーの場合、1をマイナーの主音にすることもありますが、ここでは1をメジャーキーの主音とします。Amの場合Cが1に相当します。Cから考えて6番目に相当する音がAなので、Amが6となります)。
1・Am→F→G(→C)
[6451]
数えられないくらい使われているコード進行。
ポップスの領域では小室進行と言われていたり。
メタルでも非常に多く使われている(デスメタルじゃないが、アイアンメイデンはこればっかりな気がする)。
最近の曲だとObscuraのWhen Stars Collideのリフがこのコード進行を想定して作られたと思われる。
最後にCに行くかどうかは好み。
2・Am→F→G→E
[6453]
前の進行とほぼ同じだが、最後にEに行くバージョン。最後のEはEmでもよし。Eだとマイナー臭がキツくなり(メジャーコードなのに何故?と思うかもしれないが)、EmだとマイルドになってややJpop感が出る。
3・Am→G→F→E
[6543]
やや音楽理論から外れる進行だが、メタルでの使用率高め。
最後のEはEmでもOK。Eにするとラテン系というか民族臭キツめ。
4・Am→G→Em(→F)
[6534]
ん?メタリカの臭いが!又はIn Flamesの臭いが!
これもEmの扱いは自由でEでも可。Fはあってもなくても良いが、循環させるとF→Amという違和感のあるコード進行になるので注意。
ただデスメタルなので少々の間違いはOKとしよう。
5・Am→Dm→E
[623]
やっとここでマイナーのスリーコード。
定番というか音楽の基本のような進行。上記のものはメジャーキーのコードが混じるので、それでは明るすぎる!と思う方はマイナー臭しかしないこのコード進行がオススメ。
EはEmでも良し。しかしEmにすると暗さがマイルドになる。
6・Am→Bm♭5→E
[673]
上のスリーコードのツーファイブ版。聴いた感じでBm♭5にするか、Dmにするか決めたら良い。かなり暗い。
7・Am→Em→F→G
[6345]
個人的に感動する進行。ただマイナーっぽくないと感じる可能性も。
メタルでの使用例は知らないが、ちょっと前に流行ったポップスで使われていた気がする。たしか、Da-iCEのシトラス。
EmをEにしても良いが、この場合はEmの方が風情があると思う。
8・Am→F→B♭→E
[647♭3]
少し特殊なコード進行。Bm♭5ではなくてBを半音下げたB♭を使うところがミソ。キーの主音に対して半音上にできるメジャーコードをナポリのⅥまたⅡと言い、これがそう。
ジョンレバサーがこのコード進行を考えて作ったかどうかわからないが、Phobophileのあのリフはこれに当てはまる。
ざっとこんなもんでしょう。
とりあえずは上記のコード進行でリフを作ってみましょう。
それでは2の「考えたコード進行に沿ってメロディをつける」について書いていきます。
コード進行が決まったところで、次はメロディ作りにとりかかるわけですが、何も考えずに音を並べるとコード進行を決めた意味がないので、ここではコードに対してどうメロディをつけるかを紹介したいと思います。
ただし、本来メロディ作りは自由なので、ここで紹介するやり方が正しいメロディの作り方というわけではありません。
キーAmの曲のほとんどはAmコードから始まるので、まずはAmにどうやってメロディをつけるか考えてみましょう。
ここで基礎的な話になりますが、コードというのは、3つの音で成り立っているのが基本の状態となります。
Amの場合、A、C、Eという音がAmを構成します。ここにもう一つ足してA、C、E、Gとしても良いでしょう(Am7になりますね)。
これらの3つ、或いは4つの音をコードトーンと言い、コードにメロディをつける際はこのコードトーンを中心に選ぶのが定石となります。
つまりAmの上にメロディを作るならば、A、C、E(+G)の音をメインに作るわけです。
しかし「コードトーンをメインに」と書いた通り、コードトーンばかりを使うわけではありません。
そこで登場するのが、経過音や倚音という考え方です。
例えばAからCに行く間にBを入れたメロディを作ったとします。この場合、Bというのが、AからCに行く経過にある音ですので、正に経過音となります。
次に倚音ですが、これはもっと単純です。例えばAの音から始まるメロディを作ったとします。しかし、それだけでは物足りないと感じ、Aの前にAの一つ下のG、或いは一つ上のBを入れたとします。
その付け足したGやBの音を倚音と言います(ちなみに半音下からの倚音はスケールに合う合わないに関わらず有効です。何故かは知りません。逆に半音上からは聴こえが悪いことが多いので要注意。コードトーンの半音上というのはアヴォイドノートと呼ばれます)。
つまり、メロディというのはコードトーンを中心に使いながらも、倚音や経過音というコードトーンから外れた音も使えるわけです。
しかし、コードトーン以外の音を使いすぎるとそのコードらしさが消えるので、程々にしましょう(鳴っている時間の割合が半々なら良いのですが、コードトーン以外の音が半分以上を占めるようなら、そのコードを連想させられないかもしれません)。
特にデスメタルの場合、伴奏がないことが多いので、メロディだけでコードを連想させなければなりません。なので尚更コードトーンとコードトーン以外の音のバランスをよく考えましょう。
後、メロディ作りに於いて注意する点は音の跳躍です。減五度、七度、オクターブ以上の跳躍は好ましくないと僕が読んだ本に書いてありました(度数に関しては自身で調べてください。すみません)。しかし必ずしも悪いわけではないと僕は思います。
個人的には四度の跳躍も慎重に扱うべきかと思います。おかしく聴こえることがあるからです。おかしく聴こえるかどうかはフィーリングで判断してください。
ちなみに一番安全なメロディの作り方は音の跳躍をしないことです。隣の音にばかり移動していれば、不自然に聴こえないと言われています。
それと書き忘れていましたが、例えばキーAmに対してE(Amのドミナント)が出てきた場合に、Aのナチュラルマイナースケールでは対応出来なくなりますので、その時はハーモニックマイナーかメロディックマイナーを使用してメロディを作ってください(Eの三度の音がGではなくG♯になるため)。
それでは最後に3の「デスメタルらしく刻みのアレンジを入れる」を説明します。
例えば2の方法でコードAmに対してABCBCというメロディを作ったとします。
これが16部音符の速いフレーズであれば問題ないのですが、仮に伸びやかなメロディになったとしましょう。
全然、デスメタルではないですよね?
もちろん、Arch EnemyやIn Flamesなどのバンドはこういった伸びやかなメロディを使いますが、それは例外として、攻撃的なフレーズにしたいのならばこれは不適切と言えるでしょう。
その場合には、当たり前のことですが、刻むんです。
刻むしかありません。
テンポ110くらいの場合には16分音符でも良いし、腕に自信があるのなら32分音符で刻みましょう。
そして、その刻み方にもやり方がいくつかあると思います。
まずは、伸びてるメロディをそのままトレモロフレーズにしてしまうのが、一番簡単な手法と言えるでしょう。
上記のメロディをトレモロにしたものをあえて字で説明するなら、AAAABBCCBBBBCCCCと言うことです(リズムに関しては僕が勝手に設定しました)。
これはオールドスクールデスメタルなやり方で、オールドスクールデスメタラーは積極的にトレモロを用いましょう。
次のやり方はメロディの間にメロディより低いコードトーンを挟むというやり方です。
これは所謂、スラッシュメタル系のものから、テクデス系のものまで幅広く使えるやり方です。
先程と同じように字にすると、AeeABeCeBeBeeCeCにするといった感じです(間に挟むコードトーンを小文字にしました)。
キーAmの場合はEの音がギターのスタンダードチューニングの6弦の開放弦になりますので、tabで表すと5-0-0-5-7-0-8-0-5-0-5-0-0-8-0-8という風にギター向きの弾きやすいフレーズになります。
他にもこれの応用をするなら、AeG♯ABeBCeBABeCBC(tabで表すと5-0-4-5-7-0-7-8-0-7-5-7-0-8-7-8)という風に細かいメロディの動きをつけても良いでしょう。
ちなみに間に挟むコードトーンの選び方ですが、ルート→五度→三度の順で優先順位が高いと思います。その優先順位で選べない場合は、上の例の様にギターで弾きやすい音を選びましょう。
このタイプのリフの作り方は古典的なロックやメタルでも見られましたが、僕の中ではAt The GatesとNecrophagistの二つのバンドのイメージが強く、これ系のバンドが好きならやらなければならない手法と言えるでしょう。
それとこれ系のリフならやらなければならないことがもう一つあります。
それはコード進行の変化に合わせ間に挟むコードトーンを変えることです。
例えばAmからFに移行した際、トップのメロディはそのままでも良いのですが、間に挟む音をeからfに変えなければなりません。
ギターの場合、トップのメロディが同じでも弾くポジションが変わるので面倒だと感じるかもしれませんが、これをやるのとやらないのとでは演奏効果がまるで違います。
特にコード進行に於いて、AmからF、或いはGに行くというのは定石パターンで、これをするだけで一気にメロデス風になります。
At The GatesのBlinded by Fearのリフでも、間に挟まっている0の刻みが8に変わるところがありますよね。アレです。
AmからFの場合、Fの時に間に挟む音として特に効果的な音はルートのfでしょう。
仮にコード進行がAmからDmだったとしても、あえてdを選ばずにfを選ぶとかなりメロデスになります。
他にも、コード進行がAmからGの場合は、ルートのgを選ぶのが最善である場合が多いでしょう(あくまで僕の感覚ですが)。
というわけで、このタイプのリフを作るならば、コードトーンに合わせて間の音を変えることが必須と言えるでしょう(もちろん、トップのメロディもコードに合わせて変えてください)。
さてさて、かなり長く拙い文章になりましたが、ざっくり単音リフの作り方を説明できたと思います。
画像無しの全て字での説明となりましたが、初めての記事ですので、ご容赦ください。
ただ基礎的な話を長々としただけですが、ここいらおさらばしようかと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
追記
やはり画像が全くないのは良くないと感じたので、上記の僕が作ったリフのtabを貼っておきます。
Am以降のフレーズはアドリブで作りました。ギターのポジション的に弾きにくい形になっているかもしれませんが、ご容赦下さい。あとミスもあるかもしれません。
それとアプリの都合上、ほとんどの音にpmがついていますが、気にしないでください。
コード進行はAm→F→G→Eとなっています。
何かのパクリみたいに聴こえるかもしれませんが、ちゃんと自分で考えて作りました。